広野で叶えたい夢を少しずつ、楽しみながら実現していきたい

自然農法で米作りを行う佐藤雄己さん

秋田県由利本荘市出身。移住セミナーへの参加をきっかけに、2023年12月、東京から広野町に移住。測量士としての仕事を続けながら、自然農法での米作りを始める。将来は無農薬のみかん、りんごなどの果樹栽培も視野に、農業を楽しむ日々を送っている。

みかんが育ち、バナナも栽培されている広野町に魅力を感じました

自然農法による農業をやりたいと考えていた私が広野町を知ったのは、東京で開かれた福島県12市町村の移住セミナーに参加したのがきっかけです。実際に活動している人の話を聞く機会や、担当の大森さんとの出会いがありました。さらに、現地見学の交通費と宿泊費の補助があることを知り、「行ってみよう」と思いました。

広野町は気候が良く、みかんが育って、バナナの栽培もしていると知ってとても魅力を感じました。秋田県の実家でりんごの栽培と米作りを行っていたこともあり、米と果樹を育ててみたいと思っていたのです。日本海の近くで育ったため、近くに海があることにも惹かれました。セミナーの後、初めて広野町に来たのは2023年の10月です。

就職先、田んぼ、住まいがトントン拍子に決まっていきました

私は測量士として長く仕事をしており、移住後もその経験を生かして働きたいと思っていました。測量会社はないかと探してみると、広野町に1社ありました。早速連絡し、面接をしていただいたところ、「明日からでも来れますか」と言われて。早々に就職先が決まりました。

次は米を育てるための田んぼです。町内で農業を営む横田さんという方を紹介した記事を見て、「田んぼやりたいんです」と問い合わせてみました。すると「貸してやるよ」と言ってもらえたんです。見学に来た際にお会いして、7アールの田んぼを借りることができました。

住まいはタイミングよく空いた町営住宅があって、そこに入居できることになりました。海が近くて、バリアフリーで、とてもいいところです。10月から11月の間に仕事や住む家がトントン拍子に決まり、不思議な縁のようなものを感じました。そして12月、広野町に移り住みました。引越しは次男が手伝ってくれて、今は次女が一緒に住んでいます。

測量士と自然農法の米作りで、忙しくも充実した日々を送っています

2024年の5月が、広野町での私の米作りの始まりです。耕起や田植えの機械がまだないため、田んぼを貸してくださった横田さんに田植えまでをやってもらいました。自然農法は化学肥料を使わず、自然のまま稲を育てるやり方です。除草剤も使わないので、草との戦いなんですね。手作業で草取りをしていたら腰がきつくて、見かねて東京から家内が手伝いに来てくれたこともありました

米は順調に育ち、9月には初めての収穫です。町内で子ども食堂をやっている方がいるので、お米を提供しようと思っています。自然農法で育てた米を、町の子どもたちに食べてほしい。医食同源と言うように、食べ物は大事です。それを子どもたちに伝えたいですね。

みかん、りんごなどの果樹が実る風景を生み出したい

もう一つ私がやりたいと思っているのは、自然農法でのみかんやりんごの栽培です。広野町はみかんの里と言われていますが、みかん農家はまだいないんですね。無農薬のおいしいみかんを食べた子どもたちが「自分も作ってみたい」と思ってくれたら嬉しい。将来的に、みかんを栽培する人が町に増えていくことを願っています。町のあちこちで、みかんのオレンジ、りんごの赤や青が並んでいる風景を想像するとワクワクします。

耕作放棄地などを活用し、地域の皆さんにご協力いただきながら、少しずつ栽培のための土地を増やしていけたらと思っています。田んぼをやりながら果樹や野菜をつくることが夢です。レモンやイチジクなども作ってみたいです。

海岸で見る朝日に、一日のエネルギーをもらえるような気持ち

引っ越してきて1週間くらいした頃、海岸に散歩に行き、昇る朝日を見ました。後で知ったのですが、広野町は「日本一美しい日の出の町」を宣言しているそうですね。確かに「きれいだなぁ」と思い、写真を撮って家族に送りました。一日のエネルギーをもらったような気がしました。

町の住み心地はいいですね。今住んでいる町営住宅は南向きに窓があって日当たりが良く、冬でも昼間は暖房がいらないくらいです。夏は南と北の窓を開けると風がスーッと通って、海の近さを感じます。

一番印象深かったのは「川がきれいだなぁ」ということです。町には北迫川、浅見川、折木川が流れていて、どの川もきれいで驚きました。また、測量の仕事をしながら地元の方とお話しする機会もあるのですが、人柄がおっとりしていて、ゆったりとした雰囲気があるなと思いました。

ただ、最初は自転車しかなく、店も少ないので、買い物などに不便を感じることもありました。そういう面で都心は便利ですが、都会も田舎も、良し悪しはどちらにもあります。都心にはない良さがここにはあり、今は車があるので移動はしやすくなりました。

広野で叶えたい夢を少しずつ、楽しみながら実現していきたいです

田んぼの草取りをしていたとき、ヤゴが稲に上ってきて羽化するのをたくさん見ました。モリアオガエルの卵塊も見つけました。農薬を使わないと生態系のバランスが良くなり、今までいなかった生物が寄ってくるんですね。そういうのを見る楽しみもあります。

自然農法での起業で、12市町村の起業支援金を受けることもできました。事業計画書の作成など私には難しかったのですが、移住支援センターの方が申請をサポートしてくれました。今後、農地を広げられれば、長男や次男も移住してきて一緒に農業をやってもいいと言ってくれています。

来年からは新たに50アールの田んぼを借りることができ、さらにたくさんの米作りができるようになります。ゆくゆくは、種もみを直接田んぼにまく直播きなどにも挑戦してみたいと思っています。

秋田にいた頃は、日本海で岩牡蠣を採って食べたりしていました。ですから海にも関心があります。広野の海で、ホタテや牡蠣などもつくってみたいですね。やりたいことがたくさんあって楽しい。少しずつ実現していきたいと思っています。